在船者の遺言

在船者の遺言

船に乗っている人は、海上で外界と隔絶されている状況が長く続きます。そのため、陸上で普通に生活している人とか置かれている環境が違うことが加味され、法的に認められる遺言書の作成方式も違ってきます。

近年では、1ヶ月程度の船旅を楽しまれるという方も増えてきているようですが、旅行中に具合が悪くなった場合、船舶上でも自筆証書による遺言書の作成は可能です。しかし、公正証書や秘密証書といった、公証人を必要とする遺言を作成することは難しい場合がほとんどです。そのような場合、船長や事務員1人に加え、証人2人以上の立会いをもって(全員の署名捺印が必要)、遺言書を作成することができるようになりました。それが、在船者の遺言です。この遺言書は、遺言者の自筆ではなく代筆でも問題ありませんが、口頭での遺言は許されていません。もし、署名捺印ができない人がいる場合には、立会人または証人がその事由を付記しておく必要があります。在船者の遺言は、家庭裁判所での確認の審判は必要ありませんが、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6ヶ月間生存するときは、その効力を生じなくなります。

ちなみに、船舶遭難者遺言については、証人2人以上の立ち会いのもと、口頭で遺言をすれば足り、その場での筆記・読み聞かせは不要とされています。証人が遺言の趣旨を筆記し、これに署名捺印をすることになりますが、遺言の趣旨の筆記及び各証人の署名捺印は、遺言者の面前で行う必要はなく、後日別の場所で行うことも許容されています。もし、署名捺印ができない人がいる場合には、立会人または証人がその事由を付記しておく必要がありますが、この対応を行なっていれば、署名捺印できない人も証人になり得ます。なお、船舶遭難者遺言は口頭での遺言作成を許容するものであるため、証人の1人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所へ請求し、確認の審判を得なければならないとされています。在船者の遺言と同様に、遺言者が陸上に戻り、普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6ヶ月間生存するときは、その効力を生じなくなります。