遺産分割とは

遺産分割とは

遺産分割とは、被相続人(亡くなった方)が、亡くなった時点で持っていた財産(遺産)について、個々の遺産をだれが取得するか決める手続きのことです。
相続人が一人である場合には、全ての遺産は相続人一人の単独所有になりますので、遺産分割は必要ありません。しかし、相続人が複数人いる場合には、遺産を一時的に相続人全員で共有する関係に立つので(民法898条)、共有している遺産を各自に分配する手続きが必要です。この遺産の分配についての話し合いを遺産分割協議といいます。そして、遺産分割協議において定まった事項をまとめた書面のことを遺産分割協議書と言います。

遺産分割の方法

遺言がある場合に、その中に遺産分割の方法について記載があれば、原則としてその遺言に従います。
しかし、遺言で禁じた場合を除き、相続人全員が協議をして、遺産の全部又は一部について、遺言と異なる分割方法を定めることも可能です。遺産分割協議では、相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる分割をすることもできます。遺産分割には、期限というものがなく、いつでも自由な分割請求が可能です。

ただ、相続税の申告が必要な場合には、相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内に申告が必要です。
また、2024年4月1日以降に、相続により不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請することが義務付けられ、正当な理由なく登記が遅れた場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。
2024年4月1日より前に発生している相続でも、未登記の場合には同様に義務があり、2027年3月31日までに登記の申請が必要です。相続が発生したあと、長期間分割協議がなされないままでいると、相続開始時には存在していた遺産が滅失したり、相続人の死亡により、更なる相続が発生するなどして、「争続」に発展するケースも少なくありません。

2021年4月の民法改正により、2023年4月1日以降に相続が発生したケースでは、他の相続人が生前贈与を受けていても、相続開始から10年を経過すると特別受益として主張ができなくなりました。
また、扶養の範囲を超えて被相続人の療養看護を行ったり、被相続人の事業を助けたりして、被相続人の財産の維持や増加に特別な寄与をした場合でも、相続開始から10年を経過すると原則として寄与分の主張ができなくなりました。
2023年4月1日より前に発生した相続にも改正の効力が及びますが、経過措置により、相続発生から10年経過時又は施行(2023年4月1日)から5年経過時のいずれか遅い方までは主張ができます。
上記のとおり、遺産分割自体に期間の制限はありませんが、紛争が複雑になったり、特別受益や寄与分の主張が制限されたりしますので、遺産分割は、可能な限り早い段階で手続きを行なうことをお勧めします。

想定される事例

早期の遺産分割をお勧めする理由として、紛争になりやすい点をご紹介します。

【事案】

Aさんの父親が亡くなって相続が開始した事案で、当時の相続人は「母親(被相続人の配偶者)」「長男(Aさん)」「二男(Aさんの弟)」の3人であったところ、特に争いもなかったので5年間放置してしまっていた。

【結果】

父親の相続手続きが終わらないうちに二男が亡くなってしまったため、二男の相続人である「二男の妻」と「二男の子」が相続人となった(数次相続)。
その結果、相続人が「母親」「長男(Aさん)」「二男の妻」「二男の子」の4人に増えてしまった。
この場合、相続人の全員が日ごろから交流をしていれば、話を進めやすいのですが、一般的には、同じ親族であっても血縁が遠くなればなるほど疎遠になることが多くなり、結果として合意を得ることや、そもそもの話し合いをすることが難しいケースがあります。
また、相続人に未成年者が含まれる場合には、特別代理人の選任が必要になる場合も多く、更なる時間・費用が必要となってきます。
相続に関する民法の改正により、遺産分割協議成立の前に預貯金の一部を単独で取得できたり(909条の2)、配偶者居住権が創設されたりしました(1028条、1037条)。また、婚姻関係が20年以上の夫婦の場合、例えば、夫が亡くなる前に居住用建物や敷地を妻に贈与していても、特別受益として遺産に持ち戻すことを免除していたと推定する規定もできました(903条4項)。亡くなった親を子の配偶者が療養看護していた場合には、相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月以内、又は、相続開始の時から1年以内であれば、特別寄与料の支払を相続人に請求できる規定も新たにできています(1050条)。
事例でご紹介した問題以外にも、遺産分割の遅延によって、リスクを負うケースは数多く想定できます。実際にご相談に来られる方の中にも「もう少し早く来ていただければ……」ということも少なくありません。弁護士法人アルファ総合法律事務所では、できるかぎり円滑なお話合いによる遺産分割をお手伝いするために、相続・遺言に関する無料相談を行なっています。まずはお気軽にご相談ください。