遺言書の作成

遺言とは

遺言は、一般的に「ゆいごん」と呼ばれていますが、民法ではこれを「いごん」と読みます。遺言は、遺言者(遺言を作成する方のことです。)の最後の意思を、死後に実現するために作成するものです。
遺言によって効力が発生する事項は、いくつか法律に定められていますが、その代表的なものが相続に関する事項です(相続分の指定や遺産分割方法の指定、遺贈等内容は多岐に渡ります。)。
遺言には、いくつかの種類があり、それぞれ作成方法や遺言が有効となるための要件が異なります。

自筆証書遺言

1 自筆証書遺言の特徴(メリット・デメリット)

自筆証書遺言は、民法の想定している遺言の基本的なパターンであり、特別な手続きは必要ありません。市販の便箋や封筒等を利用して作成することができ、他の手続と比べると作成費用を抑えやすく、比較的簡単に作成できるというメリットがあります。
特徴としては、遺言を残したいという本人が自ら書くという点が挙げられますが、従前は遺言者が全文を自筆で書かなければならなかったため、年齢や病気の問題で、長文を書くことができない人が利用しづらいというデメリットがありました。

しかし、近年、法律改正により要件が緩和され、遺産目録(財産の一覧のことです。)については、自筆でなくても良いことになりました。その場合でも、パソコン等で作成した遺産目録の各ページに、遺言者本人が署名押印をする必要がありますが、長文を自書することが困難な方にとっては、自筆証書遺言を作成しやすくなったといえます。
他方で、自筆証書遺言は他人の手による偽造・変造がしやすい遺言でもあります。
また、遺言者が高齢の場合や、認知症の疑いがある場合には、相続人から遺言の有効性が争われやすい類型でもあります。
公正証書遺言であれば無効の疑いがなくなるというわけではありませんが、自筆証書遺言は、前記のような理由により、遺言自体の有効性が(他の遺言に比べて)争われやすいという傾向にありますので、第三者による関与が気になる場合や、有効性が争われる可能性をなるべく減らしたい場合には、次に説明する公正証書によって作成することをお勧めします。

2 自筆証書遺言が有効となるための要件

前記のとおり、自筆証書遺言が有効となるためには、原則として遺言者が全文を自筆することが必要となります。このほか、日付を記載すること、署名押印をすること、訂正をするときは所定の訂正方法をとることが必要となります。
各要件について、いつの日付を書けばよいのか、実印でなければいけないのか、封筒に入れた方がよいのかなど、作成する中でご不安な点・ご不明な点が多々あると思います。
弁護士にご相談いただけましたら、記載の方法や、前記のような様々な疑問にお答えしながら、作成のサポートをさせていただくことが可能です。

3 自筆証書遺言保管制度

法改正により、自筆証書遺言を、法務局(遺言書保管所)にて保管してもらえるという制度が始まりました。これにより、比較的手軽に作成できるという自筆証書遺言のメリットを活かしつつ、(作成後に)改ざんのおそれがあるというデメリットを回避することができるようになりました。
遺言書自体の有効性が担保されるわけではないものの、遺言書が無効となるリスクを軽減することができ、裁判所における検認手続も不要となります(保管制度を利用しない自筆証書遺言は、勝手に開封することはできず、中身を確認するためには家庭裁判所に申立をして、「検認」という手続を踏み、裁判所で開封をしなければなりません。)。
遺言書の様式(余白や用紙等)に細かい制限があり、申請のために遺言者本人が遺言書保管所に赴く必要がある等の条件もありますが、自筆証書遺言をご希望の方は、当該制度の利用をご検討されるのもよいかと思います。

公正証書遺言

1 公正証書遺言の特徴(メリット・デメリット)

公正証書遺言は、公証人という専門家に依頼し、遺言を「公正証書」という書面の形にして作成するものです。原則として、公証役場に赴いて、公証人1名と証人2名の立会いのもと、遺言者が作成したい内容を公証人に口頭で伝え(「口授」といいます。)、書面化する形をとります。
文案を事前のやりとりである程度固めておくことはできますが、遺言者本人の意思を最終的に確認するため、実際に作成する当日に、誰にどういった財産を残したいのか、遺言者本人が直接公証人に伝える必要があります。
メリットとしては、公証人や証人の立会いのもとで行われるため、遺言の有効性が争われづらいという点があげられます。また、公正証書の原本は、公証役場に保管されますので(原則として、遺言者の死亡後50年)、紛失の危険もほとんどありません。また、自筆証書遺言と異なり、検認を行う必要もありません。

他方、文案を作成する際には、事前に公証役場とのやり取りが必要となります。文案作成や事前のやりとりは、弁護士が代わりに行うことができますが、作成の当日に、公証人に遺言内容を伝えるのは遺言者本人にしかできません。
また、公正証書を作成するためには、公証役場に手数料を支払う必要があります(弁護士費用とは異なります。)。金額は、遺産の額や遺言内容によって変わります。このほか、証人の手配を公証役場に依頼する場合には、証人の日当が必要となりますし、病院や施設への出張を依頼したい場合には、出張費用もかかります。
そのため、作成までに手間暇や費用がかかるというのが、この作成方法のデメリットとなります。

2 公正証書遺言が有効となるための要件

前述した、証人2名の立会いや、遺言者による口授のほか、公証人による読み聞かせや、遺言者・証人・公証人の署名押印が必要となります。
署名などの形式的な要件は、作成当日に公証人のサポートを得ながら進めることができますので、あまり心配はないと思いますが、遺言の内容そのもの(文案作成)や、公証役場とのやりとりのサポートについては、弁護士においてサポートさせていただくことが可能です。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が作成した遺言に封をして公証役場に持参し、遺言書の「存在のみ」を証明してもらうという類型です(遺言そのものは公証役場に預けませんので、遺言者にて保管の必要があります。)。遺言者の署名押印がされていれば、本文は自筆でなくてもよいというメリットはありますが、適式な方法で封印する必要があり、また、内容そのものを公証人に確認してもらっているわけではないため、公正証書遺言のように、争われづらいというメリットまではありません。

遺言作成について弁護士ができること

上記のように、一口に遺言と言っても、さまざまな種類があり、それぞれのメリット・デメリットがあります。また、それぞれ有効となるための要件が決まっているものもあります。
弁護士にご相談いただけましたら、ご相談者様にどういった方法が適しているか、丁寧に説明をさせていただきます。また、自筆証書遺言の場合も、公正証書遺言の場合も、ご依頼後、基本的な文案は弁護士が作成し、公証役場との調整も行います。
遺言について、少しでもお悩みの場合には、弁護士法人アルファ総合法律事務所にご相談ください。